2022/01/20更新版 多重物理の設定方法(PmxTailor)
この記事で使用しているバージョン:Vroid2Pmx_1.00.04、PmxTailor_1.00.02
注意事項
こちらの記事を最初に読んで、ご理解いただけた方のみ作業を進めてください。
はじめに
この記事ではPmxTailorを用いた多重物理の設定方法を解説します。
Q:多重物理ってなに?
A:スカートと内側のフリルスカート両方に物理を入れる…みたいな、ふたつ以上の重なる物理設定のことです
VRoidで言うところの重ね着に物理を入れるような感じです。
また、この記事内では多重物理の説明のみを行いますので、スカートの物理入れよりも前の工程の手順ややり方についてはこちらのカテゴリー内の記事を参照してください。
【余談】
実はわたしとしては多重物理を設定するのをあまりおすすめしていません。スカートの形が変形しやすいですし、モーションの修正なんかもちょっと大変です。
あと多重物理を設定しても良い感じになりにくい重ね着/良い感じになりやすい重ね着の形があるので、軽く紹介します。
■多重物理をしないほうがいい服の形状
× 筒状円形スカート×2の重ね着
この服だったらフリルを外側スカートにくっつけて普通の物理を入れたほうがきれい
△ 外側スカートと内側スカートの色が異なるもの(貫通したとき目立つから)
■多重物理を設定してもおそらくOKな服の形状
〇 内側のスカートに物理を入れない場合(タイトスカートは物理を入れなくて良い気がする)そもそも厳密には多重物理じゃないケース
動きのサンプル:
https://twitter.com/RioMinato/status/1478601274266615811?s=20
〇寄りの△ 外側スカートの前部分が開いている服(膝が貫通しにくいから)
動きのサンプル:
https://twitter.com/RioMinato/status/1466685550250045440?s=20
例に使うモデルの紹介
例としてこのモデルのスカートに多重物理を入れていきます。
VRoid(正式版)にプリセットとして入っている制服みたいな洋服です。
上の項目でやめたほうがいいと言ったばかりの服ですが、多重物理の基本を解説しやすい形ではあるので使っていきます。
設定を以下のようにいじっています。
ここで先にVRoid上で意識するべきことをお話します。
■外側のスカートと内側のスカートの隙間
外側のスカートと内側のスカートのあいだには隙間が必要です。最低でも画像くらいの余裕は欲しいです。
この洋服はプリセットのままのパラメータだと外スカートと内スカートがぴったりとくっついていますが、MMD上では外スカートと内スカートをまるでひとつの材質のように同じ動き方をさせることはできません。それぞればらばらに動くことになります。
スカート同士の貫通をなるべく避けるためにも、可能なら大き目の隙間が欲しいところです。
■物理を入れた後のスカートの形状を意識する
物理を入れると重力が働くので、物理を入れた範囲から下のスカートの生地がファサッ…と下に落ちます。
特に、内スカートは外スカートよりも重たく設定することになるので、スカートを膨らませすぎると物理設置後の形が結構崩れてしまうかもしれません。
ある程度重力で下にスカートが引っ張られることによってスカートがしぼむことを念頭に置いておくと良いと思います。
あと場合によっては逆に膨れたりもします……多重物理……難しい子……
以上のことを踏まえたうえで、VRMファイルのエクスポート、PMXファイルへの変換~髪の物理追加までの手順を行ってください。
PmxTailorでスカートに物理を入れる
多重物理とはいえ、スカートに物理を入れるまでの手順はこちらの記事と同じです。
スカートに物理を入れる前の状態はこんな感じです。
外側のスカートを外スカート、内側のスカートを内スカートと名前をつけておくと分かりやすいのでおすすめです。
PmxTailorを開き、モデルを読み込みます。
(画像を流用しているためバージョンが違いますが読み替えてください)
パラ調整タブで通常と同じように材質やプリセット等を設定していきます。
外スカート、内スカート、どちらから設定しても問題ありません。
試しにこんな設定でやってみます。
【外スカート】
【内スカート】
ここで注意すること:
- 外側のスカートと内側のスカートの剛体グループは別にする
- 内側のスカートの質量を外側よりも重たくする(数字が大きいほど重たい)
ここまで設定できたら、Pmxエディタに戻ります。
物理を入れる範囲を取得しにいきます。
絞り込み機能を使って、外スカートと内スカートだけを表示している状態にします。
右下の「正」ボタンも押すと見やすいです。
外スカートを表示したり非表示にしたりしながら、どのあたりから物理を入れようかな…と考えます。
今回はスカートの根本からがっつり入れることにしてみます。
というわけで外スカートの物理を入れる範囲はこのくらいにします。
範囲を決めたら、Pmxエディタのメニューで編集→リスト関係→View選択対象(複数)のリスト選択→頂点にチェックを入れます。
こんなメッセージが出てきたら「はい」を押します。
頂点を選択する状態にして、外スカートの物理を入れる範囲(頂点)を選択します。
一度で上手く範囲を選択できなかった場合はSHIFTキーを押しながら選択すると選択範囲を追加できます。
逆に選択したくない頂点を選択してしまった場合はCTRLキーを押しながら余分な頂点を選択すると選択解除できます。
選択できたら、頂点タブで選択した頂点を見つけ出し(だいたいスクロールバーの真ん中らへんにあります)右クリック→CSVファイルへ保存します。
ファイル名は「外スカート物理範囲.csv」とかが分かりやすいと思います。
外スカートの物理範囲csvファイルを保存できたら、同じことを内スカートでもやります。
ただし、内スカートは外スカートよりも物理開始位置を低くする必要があります。
(図は分かりやすいように面を選択しています)
とりあえず2段くらい下げた位置から内スカートの物理を入れてみます。
出来上がりの見映えが良くなかったらまた取得し直します。
同じようにCSVファイルを書き出します。
「内スカート物理範囲.csv」とかで良いと思います。
PmxTailorに戻ります。
対象頂点CSVの開くボタンを押し、先ほど出力した外スカートのCSVファイルを外スカートの対象頂点、内スカートのCSVファイルを内スカートの対象頂点に指定します。
外スカートに内スカートの対象頂点を指定してしまったりしないよう注意しましょう。
ここまで設定できたら、PmxTailorを実行します。
PmxTailorを実行して出力されたPmxファイルをPMXエディタで開きます。
TransformViewで物理をONにして、全ての親ボーンをY軸回転させて振り回してみます。
フム…………これはなんだか………色々と改善の余地がありそうですね。
ちなみにスカートの根本付近で内側のスカートが飛び出してしまっているのはどうとでもできるので、今は揺れ方をいい感じにすることに専念します。
~小一時間後~
こんな感じになりました。
揺れ方はこんな感じで良いかな…と思うので、根本が貫通している問題をなんとかします。
貫通してしまっているのはだいたいこの範囲かな~という内スカートの範囲を切り離して、透明にしちゃいます。
やり方はいつもと同じです。
選択面を新規材質に取り出して…
材質名を分かりやすい名前に変え、内スカートの上あたりに順番を整理し、非透過度を0にします。
これで内スカートの貫通が目立たなくなりました。
使用した設定を紹介します。
【外スカート】
【内スカート】
こちらでわたしが配布している最強スカートです。
さいごに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
再度言いますが、いくらPmxTailorが優秀なツールとはいえ、現状では多重物理には結構限界がある感じです(個人の意見です)。
今回例に使用したような衣装であれば、フリルをスカートにくっつけて普通のスカートとして物理を入れることをおすすめします。そのほうがおそらく綺麗ですし、脚の貫通もしにくいです。
スカートの物理はただでさえ厄介なので(膝が突き抜けたり…)今回の例ではそれが×2になった、という認識でいたほうが良いかもしれません。実際躍らせてみたところ外スカートは貫通しなかったけど、内スカートだけ脚を貫通してしまったということがありました。
なので、どうしてもここは立体感を出したい、だからどうしても多重物理にしたい、というとき以外は多重物理にしないことをおすすめします。
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